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日本人遺族に対する韓国政府の手厚い対応のワケ…釜山・射撃場火災

【衝撃事件の核心】

 韓国・釜山の室内射撃場で、日本人10人を含む15人が死亡した火災は、発生から2週間たってなお出火原因が特定されていない。地元警察は核心部分の火元を大きく修正。失火、バックドラフト、粉塵(ふんじん)爆発とさまざまな可能性が浮上し、捜査は迷走している。日本人被害者の遺族に、手厚い対応を取った韓国政府に対し、韓国のサイト上には「なぜ日本人に謝るのか」といった書き込みがあった。メディアも「逆差別」と報じた。日韓にまたがる未曾有の惨事のその後をリポートする。(ソウル 桜井紀雄)

■「安心、安全!」…初めての海外旅行で

 福岡から釜山まで船で2時間。九州北部の人にとって東京よりも近く、釜山はまさに「安近短」の代名詞だ。

 14日に長崎県雲仙市から訪れ、火災に巻き込まれた大久保章さん(37)ら中学時代の同窓生一行9人も1泊2日の初めての海外旅行先として釜山を選んだ。

 射撃場に入る直前の一行に声をかけた向かいの土産物店女性(47)は「彼らは本当に旅行を楽しんでいるようなうれしそうな顔で『行ってきますよ』と射撃場に向かった」と振り返る。

 一行が入ったのは、日本の旅行サイトで《国際市場の中! お買い物ついでに射撃はいかがでしょうか? 安心、安全! 流暢(りゅうちょう)な日本語で丁寧に説明》とうたわれたスポット。警察が公開した防犯ビデオの映像には、出火の直前まで互いに拳銃を見せ合いながら射撃に興じる被害者らの姿が映し出されていた。

 章さんらの棺とともに19日に帰国した父親(64)は「ともにがんばってきた仲間が楽しいはずの旅行で、着いてから2時間ちょっとでこんな結果になるとは…」と無念さをにじませた。

■たばこの失火…一転、射撃台の爆発

 「火元は休憩室のソファ付近。爆発による火事の可能性はない」

 地元警察は当初、このような見方を示していた。射撃場は、1カ所しかない入り口側にある休憩室と奥の射撃スペースに大きく分けられる。休憩室で発生した火がソファや壁の防音材を焼いて大量の有毒ガスを瞬時に発生させ、被害者らを巻き込んだというのだ。

 警察幹部への取材から「たばこの吸い殻やライターが見つかった」とし、「日本人客は射撃場でよくたばこを吸っていた」と日本人客の喫煙に原因があるかのように報じる地元メディアもあった。

 だが、捜査は迷走する。

 地元警察は16日、日本人犠牲者とされた1人が遺族の確認とDNA検査の結果、韓国人だったことが分かったと発表した。

 18日には「火元は射撃台で爆発による火災だった」と訂正。射撃スペース内で発生した強い火気でドアが外側に曲がり、ドアノブが溶け落ちていた。このことが3度目の現場検証によってようやく確認された。

 警察は、捜査のトップを警察署長から地方警察庁次長に替え、捜査員を59人から81人に増員。

 20日には「射撃台にあった銃の銃身の一部に破損があった。有力な火災原因のひとつとみて捜査を進めている」と明らかにした。破損のために発砲されずに飛び散った火花が空気中の火薬などに引火、爆発を引き起こした可能性が浮上したのだ。

■バックドラフト? 粉塵爆発?

 「バックドラフト」(逆気流現象)。ハリウッド映画のタイトルとして有名になったこの火災現象に捜査当局や韓国の専門家が注目している。

 密閉空間で起きた火事は酸素不足で炎を上げないが、空気が流れ込むことで、急な爆発につながる現象を意味する。射撃スペースはまさに密閉空間で、ドアから空気が入ることで大爆発を引き起こしたと推測される。

 そして、もうひとつ。バックドラフトとともに注目されているのが「粉塵爆発」だ。

 空気中の濃度の高い粉塵にエネルギーが伝わり、熱と圧力を発して爆発する現象だ。2006年にソウルの室内射撃場で従業員1人が死亡、日本人客ら7人がやけどをした火災では、銃口から出た火花でこうした現象が起きたとみられている。

 今回の火災でこれらの現象が起きたとは裏付けられていないが、警察幹部は「急激な大きな炎による惨事の原因はこのような現象でなければ説明できない」としている。

 火災当時、射撃場では、標的を動かすモーター5台のうち3台が故障し、2台だけが稼働しており、モーターの過熱が出火につながったとの見方もある。

 「現場で油のにおいがした」との鑑識関係者の話を伝えるメディアもあり、火災原因の可能性は広がる一方だ。

■「静かに耐える日本人」

 火災現場前で身じろぎもせず、じっと手を合わせる若い女性。遺体安置所の控室で、静かに互いをいたわり合う年配の男女。韓国メディアは、日本人遺族らのこのような姿に触れ、家族の死を泣き叫び、周囲もそう悲しみを表現することを期待する韓国人と比較して報じた。

 《ひたすら静かに現実に耐えている。しかし怒りを忘れたわけではなく、何度かその怒りを激しくぶつけることもあった》。韓国の有力紙、朝鮮日報はそう表現した。

 李明博大統領が鳩山由紀夫首相に即座に謝意を表明するなど、今回の火災で、韓国政府は、日本側に対して異例ともいえる手厚い対応に出た。この対応について報じた産経新聞などの記事を取り上げ、韓国のテレビ各局は「日本のメディアが異例の対応と評価」と報道した。

 韓国の鄭雲燦首相も現地入りし、日本人遺族一人ひとりにひざを折って慰めた。韓国メディアがこれに同行し、遺族への取材を進めた。中央日報によると、その後、日本側の要望でメディアを遺族から引き離すため、遺体安置所などに警察官ら約100人が配備された。韓国では異例の措置だという。

 火災現場の公開をめぐっても警察側とメディアが衝突した。韓国では、時間を置かずに火災現場などがメディアに公開される。出火原因の究明が進まない今回の火災では、予定されていた公開が延期された。

 韓国人記者に警察は「原因を究明する前に記者を近づけさせれば日本側から抗議を受けかねない」と説明したという。

■対応の格差に「逆差別」との声

 日本側に謝罪した李大統領に、ネットでは《なぜ、国内の大惨事で国民に謝罪したこともないのに、日本人に謝罪するのか》との声も書き込まれた。

 「逆差別」。火災数日後から韓国メディアはこんな言葉を使い出した。一人ひとりに付き添い要員が配置された日本人遺族と韓国人遺族に対する韓国当局の対応の差を指摘したものだ。入院4日後に死亡した韓国人女性ガイド(65)の遺族のもとには、悲しみの最中、病院側から200万円の治療費が請求された。

 今回の火災で日本メディアは多数の取材陣を現場に派遣した。現場に張り付き、警察の動きの一部始終に目をこらす日本のカメラマンたち。日本の取材手法に関心を持ち、逆取材する韓国人記者の姿もみられた。

 現場前には、献花台が設けられ、《ごめんなさい》《天国に行ってください》とメッセージが添えられた花束や日本のビールやたばこが供えられた。市場の関係者らが費用を出し合い設置したものだった。

 「お客さんのほとんどは、日本人。日ごろから日本人を本当に身近に感じてきた。被害に遭われたのは私の息子と同じ世代で、胸が痛む。どうこの思いを表現していいのでしょうか…」

 献花台で手を合わせた近くの土産物店の女性(60)はこう話し、目にじっと涙をためた。

 出火原因も究明されないまま、不安が募り、日本人観光客が減り続ければ、距離的近さだけでなく、心理的にも日本を身近に感じてきた釜山の観光業の人々が打撃をこうむる。日韓でさまざまな人が捜査の行方を見守っている。

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